これまで、ウナギ養殖用種苗は100%天然のシラスウナギの採
捕に頼っており、種苗供給量及び種苗価格が年により大きく変動し不安定であった。このため、ウナギの人工種苗生産技術を開発し、卵から親までの完全養殖を
実現することが関係者の悲願であった。
独立行政法人水産総合研究センター(養殖研究所)では、1998年に、ウナギの
人工ふ化仔魚を全長10mmまで、翌1999年には、ふ化後250日以上飼育し、大きいものは全長30mm前後のレプトケファルス幼生まで成長させること
に世界で初めて成功した。
しかし、ウナギ養殖の種苗として使用されるシラスウナギへの変態までの壁は厚
く、シラスウナギの人工生産による完全養殖の実現まであと一歩のところで足踏みしていた。
今般、飼育方法を改良するとともに、飼料の改良を進め、民間企業と共同で開発
し、特許を出願した餌を与えることにより、ふ化後230〜260日以降、全長50〜60mmに達したレプトケファルス幼生が随時変態を開始し、約20日間
で変態を完了してシラスウナギになった。シラスウナギまでの飼育に成功したのは世界で初めてである。
変態したシラスウナギのうち、最も大きなものは、現在、ふ化後612日を経て全
長20cm
を越えるウナギに成長しており、人工生産されたシラスウナギが養殖用種苗となりうることが明らかになった。