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なんでも研究室
ミ ミズあれこれ
 

ミミズの
体のしくみ

  ミミズの体のしくみなんて、単純だろうと思っていました。
しかし、調べれば調べ るほど精巧なしくみと働きがあるのがわかってきました。




解剖図を探す
 みみずの体のしくみはどうなっているのだろうか。とりあえず解剖図が、Web上 で、ないか探してみました。
●BIODIDAC

●http://www.lander.edu/rsfox/310lumbricusLab.html

日本の文献では、稲葉昭彦他 広島大生物学会編 森北出版 日本動物解剖図 説が詳しいようです。

ともかくミミズの体のしくみをしらべてみます。

アメリカのKazuko Smithさんが紹介してくださった、 サイト
 Nick Musurca's Earthworm Web Page!は、環循器、神経系、消化器官、生殖器官など詳しく書かれていて最もわかりやすい図があったのですが現在、無くなっています。

ミミズの心臓はいくつあ る?
 ミミズの心臓の数について調べてみました。ここにも落とし穴がありまし た。まずは上で紹介した欧米のミミズから。
 よく見る解剖模式図は、シマミミズ属 ( シマミミズ Eisenia foetid など ) と同じ
ツリミミズ科 ( Family Lumbricidae ) に属するオーシュウツリミミズ属 ( Lumbricus  sp. )のLumbricus Terrestris という種類のミミズのようです。上で紹介した図もこのミミズです。
 
 このミミズでは、心臓 ( heart ) は5対あるように書か れています。ミミズの背側を縦に走る背行血管(dorsal vessel )から食道を囲むように5対の心臓 ( 側心臓:lateral heart ) が腹側を縦に走る腹行血管 ( ventral vessel ) につながっています。したがって、このミミズの場合は5対あるといっているのでしょう。

 問題は、日本に多くいるフトミミズ科(Family Megascolecoidea)です。ヒトツモンミミズやシーボルトミミズなどがそうです。
 フトミミズ科フトミミズ属の血管系は、シマミミズ属よりもう少し複雑です。
 ミミズの背側を縦に走る背行血管(dorsal vessel )は、同じですが、まずこの血管が後ろから前へ体節ごとに蠕動拍動(自律的に)していて血液を前方に送っています。 これらは、未分化の心臓管の連なった もの、つまり心臓なのです。軟体動物や節足動物ではしだいに一つにまとまります。
 食道に当たる部分を囲むようにある側心臓は4対 ( 文献によっては3対 ) あります。背行血管の下側には、腸の上を縦に走る腸上血管 ( supraintestinal vessel )  があり、側心臓はこの腸上血管と背行血管から血液の供給を受け、腹行血管へ血液を送っています。このほか第10体節には背行血管と腹行血管をつなぐ血管が 左右対称ではなく、左右のどちらか一方だけにありますが、弁もなく、自動能もなくただ受動的に拍動しているそうです。したがって、このミミズの場合は、心 臓は背行血管一本と側心臓が3対または4対というのが正確かもしれません。

日本動物解剖図説 (稲葉昭彦他 広島大生物学会編 森北出版)を参考にして加筆 
 

ということで、フトミミズの心臓は一本と3対または4対、 または、7〜9個ということです。
 それでは、ということで実際にフトミミズの体はどうなってい るのか見てみました。フトスジミミズという種類では側心臓は3対でした。

  フトミミズの解剖写真(内部形態)は、こちらへ  

チョット寄り道-もともと は6対の血管かも?
(ドラえまんの仮 説)
 ミミズの心臓の数を調べているうちに、ミミズの心臓の様子にそっくりな 図がありました。それは人間や哺乳類の胎児が発生してくる過程での図です。また、魚類の胚もそうです。
 頚の両側に前後に並ぶ6対の血管があるのです。この血管は退化して消えてしまう ものと、血管になるものがあるようです。魚類ではこれが鰓(えら)になるようです。ミミズの側心臓と言われているものも先祖かあるいは発生の過程では6対 の血管で、本来の心臓は背行血管のみで、進化の過程で、6対の血管が心臓になったり、バイパスの血管になったり機能が分化していっているように思えます。 だから、ツリミミズとフトミミズでは数や機能が違ってきているのではないでしょうか。
 おもしろいのは、いずれの種類も6対の血管の痕跡があることです。
 これが食ベ物の都合で消化管、呼吸の都合で呼吸器系それぞれとの関係で心臓の様 子が変わってきているのでしょう。
 これらは、進化の過程を調べる上で参考になるのではないでしょうか。
(佐々治寛之著 東京大学出版会発行「動物分類学入門」及び坂井建雄著  株式会社ニュートンプレス発行「人体は進化を語る」を参考にしました。)



石 灰腺(calciferous gland)って何だ?
 ミミズの解剖図や特徴の話のときに時々出て くるのが石灰腺という器官です。
時々というのは、必ず出てくるのでもないし、日本のミミズを話すときはフトミミズのことが多いのですが、このときは話題になりません。しかし、気になるの で調べてみました。
 研究は古くから行われていて19世紀はじめから文献がありました。
 そして最近でも様々な研究があるようですが、とりあえず基本的なところを整理してみましょう。
どんなミミズに石灰腺があるのか
 Glossoscolecidae ヒモミミズ科、Octochaetidae フタツイミミズ科、Lumbricidae ツリミミズ科などの陸棲のミミズに見られる。Megascolecidae フトミミズでは肉眼では確認できず皮膚内に埋没されていると考えられている。
体のどのあたりにあるか
食道の後部、砂嚢の前方で消化管中に突出し ている。
石灰腺といわれるのは
この腺の内腔には2から6μていどの炭酸石 灰(炭酸カルシウム CaCO3)の粒が存在していることが多い。また腺は血管が集中している。
石灰腺の働きは
体内に吸収された余分な石灰(酸化カルシウ ム、CaO) を排出するのと、消化管中に生成される酸を中和し消化を助ける働きがある。
もう一つの注目すべき機能
呼吸によって生成される炭酸ガスを石灰腺で 吸収し、石灰と結合させて排出する働きがあるという説がある。
 
 参考にしたのは
動物系統分類学 第6巻 環形動物他 中山書店発行
新日本動物図鑑[上] 北隆館

その他の文献


The calciferous glands of the earthworm 
Harrington NR (1889)


THE FUNCTION OF THE CALCIFEROUS GLANDS OF EARTHWORMS
BY JAMES D. ROBERTSON, B.Sc.
Robert Donaldson Scholar, University of Glasgow (From the Zoology Department, Glasgow, and the Sub-Department of Experimental Zoology, Cambridge)

The Calcium Relations of Selected Lumbricidae
T. G. Piearce
The Journal of Animal Ecology, Vol. 41, No. 1 (Feb., 1972), pp. 167-188
doi:10.2307/3511

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