★ミミズのシッポ切り 

なんでも研究室 
ミミズあれ これ

ミミズのシッポ切り
その訳と仕組み
 

★ミミズを捕まえようとすると・・・・・   

 山や林でミミズを探していると、直接シャベルが触っていないはずなのに ミミズの尻尾(シッポ)のほうが切れてしまうことがあります。ミミズにもトカゲの尻尾切り(自切:じせつ)と同じようなことがあるようです。とりあえず は、今まで見た自切の様子の報告です。

 どの種類のミミズも自切するかというとそうでもなさそうだが、フトミミ ズでは数種類で見ている。
 いつも自切するかというとそうでもない。急に驚かしたり、体の一部分を固定して いたりするなど何かのタイミングで切れるようだ。大きいミミズを手で押さえていてポキッと音がしたようなこともあったが気のせいかもしれない。

  ある時、切れたミミズの体の後端部=「シッポ」を見ていると、ゼリ・ ビーンズのようになった「シッポ」は平坦な場所なのに一方向にころころ転がっていきました。これに気をとられているうちに本体はピョンピョン跳ねて、落ち 葉の下に逃げていきました。
 状況はトカゲのシッポ切りと同じです。切れた尻尾に注意をひきつけておいて、自 身は逃げようというようです

★それにしてもどう やって「シッポ」は転がっていったのでしょうか?
 3ヶ月かかってようやく、その仕組みを考え付きました。
ゼリー・ビーンズやウィンナ・ソーセージの形をした「シッポ」が転がる仕組みはこ うです。
ミミズの体には縦に走る筋肉と円周に沿って並んでいる環状の筋肉とがありますが、 この縦に走る筋肉が円周方向に順番に収縮するのではということです。筋肉がこうした運動をすると、「シッポ」は少し曲がった状態で首を振るように回転しま す。
この回転の様子は次の絵をクリックすると見ることができます。
 

このようにして地表では転がっていくのではというのが仮説です。順序良く収 縮が進行しなくてもある程度部分的であれば変わった動きになることは考えられます。
 よくよく考えると、普段でもピョンピョンはねて逃げるミミズは、このような動き をしているのかもしれません。シッポや本体を捕まえて、端を捕まえて回転するようであれば間違いありません。
 ついでに、とぐろを巻くミミズがいますが、このミミズの縦に走る筋肉は、少し斜 めになっているのかもしれません。そうなっていると筋肉が縮んだときコイル状になるのではないでしょうか。これも解剖しなければ分かりません。
 ともかく転がってゆく「シッポ」の動きはもう少し観察してゆきます。
 


★切れたシッポの観察

 フトミミズ(アオキミミズPheretima aokii  Ishizuka,1999に外部形態が似ている )を観察していたときのことです。
 何匹か捕まえていたとき、シッポ切りがありました。への字になり跳ねるように逃 げようとするときシッポを押さえたら切れました。このときは、一直線になり伸びたり縮んだりして移動する伸縮運動や蛇のように蛇行するときは多少手荒な扱 いをしていてもシッポ切りはありませんでした。
 そして、切れたシッポの片方をつまんで、もう片方は自由にすると、色々な動きを 見せました。
 最初は、左右に振ったり、回転したりして不規則な激しい動きでしたが、そのうち 予想通りの円を描くような首振り運動をはじめました。この状態で床に置くとコロコロと移動して行きました。さらに時間がたつと今度は伸縮運動に変わりまし た。やがて動かなくなりました。5〜6分間の出来事でした。
★ミミズシッポ切りの理由  トカゲと同じ理由だった
 オサムシがミミズを捕食する様子を観察しました。東京大学田無試験地の前原さんが飼育している2頭のオサ ムシのいる飼育箱にミミズを入れました。しばらくして1頭のオサムシがミミズに食いつき、するとミミズは尻尾を切りました。尻尾をくわえたオサムシはそこ から離れましたがもう一頭のオサムシがさらにミミズに食いつき再びミミズは自切し、その場から逃れました。二頭のオサムシはそれぞれミミズの尾部をくわえ 離れたところにいきました。全て一瞬の出来事でした。
 ミミズは捕食者から身を守るために自切することが確認できました。しかも二度続けてでした。
2004年8月7日(東京大学大学院農学生命科学研究科附属科学の森教育研究センター田無試験地での第七回ミミズ研究談話会ミミズ公開実習にて)

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