要素音の組み合わせ(音節、syllable)の種類
収録したシジュウカラの全ての鳴き声は、要素音 (note)
1つで鳴くか、または0.2秒未満の無音状態を挟んだいくつかの要素音が並んだ集団になってい
た。したがって要素音一つの場合も要素音の集団になっている場合も前後に0.2秒以上の無音状態が存在した。この要素音の状態を音節(syllable)
とした。(図-12)
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音節は要素音の構成の仕方により
いくつかに分類できた
a.違った種類の要素音2または3
個の組み合わせたものの繰り返しによる音節(サエズリ)
b.異種同種混在の数個の要素音
の組み合わせによる音節(単語)
c.1種類の要素音を1個から数
個繰り返した組み合わせ
d.波状の音の要素音の組み合わ
せ
e.単独または不規則に他の要素音と組み合わせ使用されるもの
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a.
違った種類の要素音2または3個の組み合わせたものの繰り返しによる音節(サエズリ)
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異なる2つの要素音または3つの異なった要素音を
1セット(句,Phrase)として、これを4から7セット時間的には3秒前後鳴き続ける。ここでの定義ではこの数セットが音節となり、数秒の無音状態を
間にして通常数回鳴き、長いときには数分間鳴
き続けることもある。これら全体を一般的にはサエズリ(Song)とされている。(図-13)
また、行動に着目した場合、必ず枝や構造物に停まって鳴いていることから「停まり鳴き(Perched
Songs)」にも該当する。サエズリはすべて同じ句で構成される音節の場合もあれば違った句で構成される音節を織り交ぜて鳴き続ける個体もあった。サエ
ズリに使われる全ての要素音はサエズ
リ以外に使われることはなかった。
サエズリの句に使われる2つまたは3つの要素音はそれぞれ音程が高いものと低いものがセットになっていて、3種の場合はそれに中間の音程のものが挟まれ
る。表示はサエズリ全体を[ ] でかこみ句は(
)内に表示し複数であることを*nとして必要な場合セット数としてnの数を入れた。例[/Au//B/)*n]。
サエズリの使われる要素音の分類
高音部 数種類(3〜4)の要素音
低音部 数種(3〜4)の要素音
中音部に使用される要素音
句を構成する要素音が2つの場合、低音と高音の組み合わせとなるが、低音部の目視での形の特徴から「へ」の字型、N字型、横棒型、波型、その他に分けら
れる。それぞれを基本として多少の変形や装飾音が加わっている。
高音側の音符はM字型、V字型、横棒型、波形、その他に分けられ、低音側同様それぞれを基本として多少の変形や装飾音が加わっている。3つの要素音で句
を
形成するサエズリは今回の調査ではサンプル数が少なく変形したものはなかった。
今回の調査では41種の要素音とそれを組み合わせた26種類のサエズリを確認したが(資
料3)形や装飾は個体ごとに違い微妙な変化や大幅な変化があるため
サエズリの種数が増える可能性が高い。1個体で6分間の間に5種類の要素音を使い17回サエズリを行う個体がいた。
収録音声の中には類似のサエズリが同時にあり別鳥と確認できた。よって別個体でも少し音程が違うだけで同じ組み合わせのパターンのサエズリをするというこ
とが確認できた。同一個体群内ではあるが親子か類縁かの確認はできていない。他の鳥ではその例もあるように似たパターンでも微妙な違いが判別でき
れば個体識別ができる可能性がある。
サエズリは繁殖期の春に行われるが、若鳥の鳴き声で様々な発声の中にサエズリの一部を混ぜて鳴く場合があった。また若鳥が不完全なサエズリをすることが
ある。サエズリは一般的には学習によるとされているが、若鳥が不完全なサエズリをする時期には親鳥はほとんど囀ることはない。にもかかわらず若鳥が不完全
であってもなぜサエズリができるのかは生得的なものにその後の学習により完成するのではという説(引用先未)を裏付けている。
サエズリ用の要素音の表記については先頭にその要素音の音程をあらわすため以下を添付した。
η- =High position 高音部の要素音
λ- =Low position 低音部の要素音
μ- =Middle position 中間音の要素音
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2種類または3種類の要素音を2〜3個をセットに
してこれを4から7セット鳴くのをすべてサエズリとしたが同じ組み合わせでも全く違う状況で鳴くものがあった。それは通常のサエズリは高い木の枝など大き
な音を出し鳴くが、巣箱の前や梢にいるメスの前でオスが小さな音で鳴くサエズリがあった。
羽ばたきと同時に波のような声で鳴くが必ずやや低音の短い波が加わる。2〜3月餌場で近くにメスがいるときや、営巣中の巣箱にメスがいるとき、巣箱前でベ
ア以外のオスが羽ばたきながら鳴く。その他、森の奥で鳴くこともあった。波といっても震えに近く営巣中の波のよう音声ではない(図−14)。
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2
種類または3種類の要素音を2〜3個を
セットに
してこれを4から7セット鳴くのをすべてサエズリとしたが同じ組み合わせでも全く違う状況で鳴くものがあった。それは通常のサエズリは高い木の枝など大き
な音を出し鳴くが、巣箱の前や梢にいるメスの前でオスが小さな音で鳴くサエズリがあった。(図-14)
羽ばたきと同時に波のような声で鳴くが必ずやや低音の短い波が加わる。2〜3月餌場で近くにメスがいるときや、営巣中の巣箱にメスがいるとき、巣箱前で
ベ
ア以外のオスが羽ばたきながら鳴く。その他、森の奥で鳴くこともあった。波といっても震えに近く営巣中の波のよう音声ではない(図−14)。
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b.
異種同種混在の数個の要素音の組
み合わせによる音節(単語)
多くの要素音は他種の要素音と一定の規則を持った順序で組み合わされていた。
別個体でも共通の特定の状況で使用されているのでこの音節
を単語と呼
称した。単語を形成している要素音と要素音の間の無音時間には単語ごとに数種の決まった長さにより構成されていて、シジュウカラが鳴き声を認知する
うえで重要と思われる。
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(図-15)の音節(単語)では最初の要素音
と次の要素音との間の無音は0.1秒で、次も0.1秒で最後の要素音の前の無音は0.03秒となっていて、この単語ではいつも無音の長さと位置は決まって
いる。
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単語形成に使われる要素音は100前後あり(資料1)、500前後の単語や熟語(資料4)を作っているのが確認できた。
なお、要素音/Oh/は/P5sh/と/EC/の要素音で構成されていて、同様に要素音/Lv/は/P5sh/と3個の要素音/EC/で構成されている。/Oh/と/Lv/の内部の音は連続していないがきわめて短い無音状態(1ms)のため1要素音としての扱いをした。(図-16) (図-17)
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それぞれの要素音は何種類もの組
み合わせに使用され単語を構成している。今回の調査では1つの単語にしか使われていない要素音もあった。(資
料5)
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